キリソの偽造ビール券輸入中国人男「知らなかった」は許されるか

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キリソの偽造ビール券輸入中国人男「知らなかった」は許されるか

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偽造ビール券を輸入したとして、中国籍の男性が逮捕されました。
偽造有価証券輸入と関税法違反の容疑です。

 

キリソ偽造ビール券で中国人逮捕

 

男は、「宅急便の中身が偽造ビール券とは知らなかった」と容疑を否認しています。
「キリン」を「キリソ」と表記するなど券自体に誤記があったようですが、一見よく出来た券だったようなので、手にとっても偽造と気付かないかもしれません。

 

とはいえ、組織的に偽造ビール券を輸入していたのであれば、偽造と知らないはずがないと思うのですが、裁判ではこの手の主張をする人が多いです。

 

しかも、意外とこの主張が通って無罪となることがあります。
犯人側もそのことをよく分かっているのです。

 

 

知っていたかどうかという点は、覚せい剤の密輸入でもしばしば問題となります。
「知らない間に入れられた」、「人から預かったバッグだった」、「サプリメントだと思っていた」等々。

 

では、検察側はどうやって「知っていた」こと、ちょっと難しく言うと「故意の立証」をするのでしょうか。

 

これまで何度かご紹介したように故意の立証は非常に難しいのですが、色々な状況から「少なくとも違法な薬物だと知っていた」だとか、「コピー商品だと知っていた」ということを推定していくことになります。

 

例えば、覚せい剤を密輸しようとして捕まって「化粧品だと言われていた」と弁解したケースについては、次のような点から故意があったと認定されました。
・いったんパスポートや現金を奪い、これらを返還するのと引き換えに「化粧品」の運搬を強要した
・化粧品を輸入するだけなのに必要以上に何度も打ち合わせをした
・座席は全てビジネスクラスだった
・飛行機内のトイレで「化粧品」を入れた腹巻きを着用した
・腹巻きを外から触ると粉末状のものが詰まっていることが分かった等々

 

ここまで事情が揃えば普通の人は「覚せい剤と知ってた」と考えるのではないでしょうか。
ただ、控訴審は、一審が故意を認定したことについて「いささか不十分の誹りを免れず、判示方法として適切さを欠くきらいがないでもない」などとしています。
故意があったかどうかは結構ギリギリだったのです。

 

しかも最近は、スーツケースの持ち手の中など運搬している側が全く気付かないような場所に覚せい剤を隠すことも少なくありません。
故意の認定はどんどん難しくなっているのです。

 

ただ、入稿審査カードの「他人から預かったもの」の欄を「なし」と書いたのに、あとから他人から預かったものですという弁解をしたり、別室での手荷物検査を拒否したといった事情があると、どんどん疑いが増していって裁判で「故意あり」とされることが多いように思います。

 

 

さて、では今回の偽造ビール券の輸入はどうでしょうか。
偽造品であることを伺わせる打ち合わせメールなどが残っていればかなり有力な証拠となります。

 

また、今回ビール券を送った目的をきちんと説明できなかったり、何度も繰り返し輸入してチケットショップに大量に持ち込んで、売却益を送り主と折半していたような事情があれば、疑いが一層増します。

 

いずれにせよ、海外では人から物を預からない、頼まれごとを安請け合いしないということが重要です。
覚せい剤の輸入の場合、外国では一発死刑ということもあるのですから。

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