弁護士が教える、逮捕されたときに絶対に覚えておきたい2つのこと

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ろくでなし子さんという漫画家というか芸術家の方がわいせつ物頒布等の罪で逮捕されました。

 

TWITTERのプロフィールを見ると、「デコまん作家・まんコラムニスト・日本性器のアート協会会員」とあります…何やら、エッジの効いた方です。

 

絶対に覚えておきたい2つ

 

 

警察は、黙秘権の説明をしなくても明確なペナルティがない!?

 

さて、この事件では「わいせつ物って何よ!」というかなり興味深いトピックもあるのですが、それはまた今度。

 

今回注目したいのは、ろくでなし子さんが取調べの際に警察官から受けた対応です。
まずは次の記事をご覧ください。

 

女性器3Dデータ事件 「ろくでなし子」が警察の“ウソ”を激白
(以下、『』で囲ったものはこのサイトからの引用となります。)

 

『まず、黙秘権の説明はされませんでした。』

 

これはアウトです。

 

検察官、検察事務官、警察官は取調べにあたっては、黙秘権の告知をしなければいけません。
刑訴法198条2項にもこう書いてあります、「あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない」と。

 

にもかかわらず、なぜ警察がちゃんと告知しないかというと、この規定に違反しても明確なペナルティがないからです。
そのため、警察が「あなたには黙秘権がありますから」云々と丁寧に説明することはありません。

 

ただ、全く説明しないとあれなので、多くの場合警察は、「もうお前も分かってるよな」だとか言って取調べを開始します。

 

 

警察の供述調書には、あらかじめ「黙秘権について説明しましたよ」と書いてある

 

加えて注目して頂きたいのは警察官が使用する供述調書です。

 

今は調書をパソコンで取りますが、そのデータには最初から、

 

上記の者に対する○○被疑事件につき、平成○年○月○日、警視庁○○警察署において、本職は、あらかじめ被疑者に対し、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げて取り調べたところ、任意次のとおり供述した

 

と書かれています。

 

ぼおっとしていては、黙秘権の説明を受けることのないまま調書が作成されてしまうのです。

 

 

供述調書に署名してしまえば、黙秘権の告知がなかったことを争うのはほぼ不可能

 

法律に「黙秘権の告知をしなかった時は、作成した調書は証拠とできない」などと書いてくれてあればいいのですが、そういったことはありません。

 

あとで裁判になって「告知がなかった」だとか争っても、任意で話したんでしょなどと言われて、証拠として採用されてしまうのです。

 

というか、さっき書いたように最初から調書のデータに「告知した」と入っているので、調書に署名押印してしまうと告知がなかったことを争うこと自体がそもそも不可能というか極めて困難になります。

 

黙秘権の告知がなかったことで自白の任意性を否定した浦和地裁平成3年3月25日判決ですら次のように書いています。

 

黙秘権の告知がなかったからといって、そのことから直ちに、その後の被疑者の供述の全ての任意性が否定されることにはならないが、被疑者の黙秘権を無視するような取調べが許されないことも当然である」と。

 

 

万が一逮捕されたときのために覚えておくことのひとつ目。「あなたには黙秘権があります!」

 

警察は取り調べのときに、「証拠はそろっているんだ。・・・やったんだろう?」などとカマをかけてきたりしますが、裁判になっても結局そんな証拠は出てこなかったりします。

 

こうして作られた供述調書であっても、裁判では多くの場合証拠として認められてしまいますし、なにより、証拠が無くて困ったなあとなっている警察に「おっ、ここが突破口か!」という捜査のきっかけを与えてしまうことになります。

 

逮捕されたら、まずは弁護士を呼んで、取調べにどう対応すべきかのアドバイスを受けてください。

 

 

万が一逮捕された時のために覚えておくことのふたつ目。「弁護士は無料で呼べる!」

 

『警察官から「弁護士さん呼べるけど、1回しか来ないし、2回目からはお金がかかるよ。四、五十万するけど、どうする?」と言われて……。
金銭的に余裕がないので、諦めたんです』

 

これが大嘘です。

 

このブログをご覧の皆様!
万が一逮捕された時のためによく覚えておいてください。

 

 

1 逮捕されたら当番の弁護士を無料で呼べます。

 

私も待機日にはちゃんと待機していて、呼ばれたらかなりの勢いで接見に行きます!

 

【当番弁護士の呼び方】

 

現在逮捕されている、という場合は、逮捕された警察署で、警察官に直接「当番弁護士を呼んでください」と言えば呼ぶことができます。

 

また、当番弁護士は、逮捕された本人だけでなく、家族でも呼ぶことができます。
当番弁護士を呼ぶ場合の問い合わせ先はこちらです。

 

日本弁護士連合会刑事事件センター 当番弁護士連絡先一覧

 

当番弁護士は、本人・家族が未成年でも呼ぶことができます。

 

逮捕期間中の72時間以内は、家族や友人や会社の人は逮捕された本人と会うことができません。
弁護士だけが例外としてすぐに会うことができますから、逮捕されたらまずは弁護士を呼んでください。

 

 

2 逮捕後、「長期3年を超える懲役や禁錮にあたる罪」で勾留された場合は、無料で(※)国選弁護人を頼むことができます。

 

例えば窃盗は最大で懲役10年なので、文句なしに弁護人がつきます。
一応50万円以上の資産があったらダメだとか条件はあるのですが、かなり緩く運用されているのでとにかく呼んでください。

 

※厳密には国選の費用を後から払うみたいな仕組みがあるのですが、いったん払えとなっても裁判が終わった後に色々やると余程のことがない限り免除になるので普通は心配ご無用です。

 

 

3 「長期3年を超えない懲役や禁錮にあたる罪」で勾留された場合にも裏ワザがあります。

 

問題は、「長期3年を超えない懲役や禁錮にあたる罪」で勾留された場合です。

 

ろくでなし子さんが刑法175条のわいせつ物頒布等の罪で逮捕されたとすると、法定刑は「2年」です。
3年を超えないので被疑者国選はつきません。

 

警察はこれをもって、(被疑者国選対象事件じゃないから)1回目の当番弁護は無料だけど、(その後は自費で弁護士を雇わないといけないから)四、五十万する、と言ったものと思われます。

 

ただし、このような場合でも裏ワザがあります。

 

記事の中にもありましたが、日弁連の法律援助事業の中の「刑事被疑者弁護援助」というのを使うと、日弁連が弁護士費用を払ってくれるので結局無料で弁護士を頼めます。

 

ネット上では何かと叩かれがちな日弁連ですが、こんなふうに人の役に立ちそうなこともしているのです。

 

 

逮捕・勾留された際、費用のことを気にして弁護士を呼ばないのはありえません

 

というわけで、タイトルにある「逮捕されたときに絶対に覚えておきたい2つのこと」は、

 

@あなたには黙秘権があります!
A逮捕されたら、当番弁護士を無料で呼べます!

 

の2つです。

 

逮捕・勾留された際、費用のことを気にして弁護士を呼ばないというのはありえません。費用は恐らくどうにでもなるのでとにかくすぐに弁護士を呼んで頂きたいのです。

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