暴力団の組事務所に行ったらこうなった

弁護士がお悩み解消にご協力

お問い合わせはこちら ≫

暴力団の組事務所に行ったらこうなった

> >暴力団の組事務所に行ったらこうなった
このエントリーをはてなブックマークに追加

最初に言っておきますが、私は暴力団とは関係ありません。
というか、暴力団と分かったら事件は受けません。

 

ただ、国選弁護の指名があった場合だけは拒否できないことになっています。
今回は、そんな国選事件の被疑者が暴力団員(?)だった話。

 

暴力団組事務所に行ったら

 

待機日に事務所で仕事をしていると、「法テラス」という国選事件の元締めから電話がありました。
近藤静雄(仮名)という方の詐欺事件で今すぐ接見に行って欲しいとのこと。

 

準備をしながら待っていると勾留状のコピーやらが届きました。
ここにはなぜ逮捕・勾留されたのかという理由(被疑事実)が書いてあります。
冒頭には「被疑者は、指定暴力団○○会□□一家△△代目構成員であるが…」との表記有り。

 

暴力団員であることはここで分かりました。
すげえ怖い人だったらどうしたもんか…

 

で、ドキドキしながら警察の接見室に行ったところ、開口一番こう言われました。

 

 

私、暴力団員じゃありません。

 

??!

 

詳しく話を聞いてみると、「指定暴力団○○会□□一家△△代目」の構成員どころか、そもそも暴力団に所属したことすらないとのこと。

 

もちろんこの組の名前も聞いたことはなく、場所もどこにあるか不明。
その他心当たりも全くなし。
本当なのか…??

 

ちなみに、暴力団かどうかというのは警察が名簿を作って勝手に登録しています。

 

勾留状に暴力団と書かれたということは、何かのタイミングで警察に暴力団認定がされたということです。

 

 

仕方ないので取調べ担当の刑事に会いに行きました。

 

私「近藤静雄さんが暴力団員じゃないと言ってるんですけど。」
警察「こっちはちゃんと調べてやっている。間違いない。」
私「証拠はあるんですか。」
警察「ある。」
私「じゃあ見せてくれませんか。」
警察「ダメだ。」
私「本人が暴力団じゃないといってるんですよ。それ以上にどうしたらいいんですか。」
警察「普通は破門状を出してもらっている」
私「……この組事務所ってどこにあるんですか」
警察「教えられない。」
私「人を勝手に暴力団呼ばわりしておいておかしいでしょう。組の場所が分からなかったら書類だってもらえないじゃないですか。」
警察「わかった。あとで住所を連絡する。」

 

途中からかなり頭にきていたので本当はもう少し強い口調だった気もするのですが、とにかくこんなような流れで組事務所へと行くことになりました。

 

 

指定暴力団○○会□□一家△△代目の事務所は、東京都心の築30年くらいのマンションの一室にありました。

 

隣は普通に人が住んでいる模様。
この人達はここに組事務所あると知っているんだろうか。

 

なお警察は電話番号を教えてくれなかったので、アポ無しで行ってチャイムを押すと……反応アリです。

 

「突然申し訳ありません。私は近藤静雄さんの国選弁護人の小林と言います。近藤さんは指定暴力団○○会□□一家△△代目の構成員ということにされて警察に捕まってしまいました。近藤さんは組員ではないと言っているので現在暴力団でないという証明のために破門状などを頂きに参りました。」と一気に伝えたところ、ドスの効いた声で「ちょっと待ってね」と言われ、しばらくするとドアが開きました。

 

中に入って驚いたというか笑いそうになりました。
古めかしいソファとローテーブル、壁には「○○会□□一家△△代目」という文字が書かれた額と、組織の構成図、飾られた日本刀っぽい何か…どうみても組事務所です。

 

 

そうと分かれば長居は無用。単刀直入に切り出しました。

 

私「近藤静雄さんという方ってここの構成員なんですか。」
暴力団っぽい人「現在うちにそういった人間はいない。」
私「良かった。困ってるんですよ。破門状だとかを出して頂けませんか。」
暴「ダメだ!」

 

??!

 

私「え…?何でですか??」
暴「こいつはうちの人間じゃない。(何か本みたいなものを見ながら)今までうちの人間だったこともない。所属がない以上破門状は出せない。」

 

ああ、そういう理屈か…
試しに、「警察の方で必要と言われたので表向きだけ破門状をもらえればいいんですが」と言ってみたのですが、事実に反する書類を作るみたいなことはやったらダメと逆に怒られてしまいました。トホホ…

 

というわけで色々相談した結果、「この者は構成員ではなく、これまで○○会□□一家△△代目に所属したことはありません」という趣旨の書類を作ってもらうことになりました。

 

ただ、これで終わったわけではなく、警察にこの書類を持って行ったら「こういう書類があるのは分かったが、暴力団かどうかはあらためてうちの方で判断する」などと言われる始末。
この時は腹が立って仕方なかったです。

 

最終的に裁判では暴力団でないと認定されたので、全部終わってからもう一回警察へ行き、届け出のようなものを出してやっとのことで登録を抹消してもらうことができました。

 

なお、あとで本人が調べてみたところ、すごく昔に知人が被疑者の名前を使ってここの組事務所のアウトソーシング的な仕事(?)をしていたことが判明しました。
で、その登録がずっと残っていて、今回逮捕された際に暴力団員扱いされてしまったとのこと。

 

2011年に暴力団排除条例が全国で施行されるようになりました。
暴力団の構成員とされてしまうと、家を賃貸したり車のローンを組んだりすることすら難しくなってしまいます。
多分その他にも色々な不便を被ることになるのでしょう。

 

警察の間違いで一方的に登録されたものとはいえ、とても怖い話です。

このエントリーをはてなブックマークに追加

このページの先頭へ

TOP 刑事事件 離婚問題 借金問題 法人破産 労働問題 交通事故 相続 企業法務