もはや匿名ではない!ネット上での個人特定方法最前線

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インターネットを実名化すべきか

 

先日、たけしのTVタックルで「インターネットを実名化すべきかどうか」ということが議論になっていました。

 

現在、インターネット上の多くの掲示板は、ペンネームや匿名で書き込みを行うことができます。
そのため、何となくバレないような気がしてしまい、つい過激なことを書いてしまった方もおられるでしょう。

 

しかし実は、書き込んだ個人を特定できるケースもあるのです。

 

というわけで今回は、ネット上で書き込みを行った個人を特定する方法や、書き込みを消す方法についてご案内します。

 

 

1 誹謗中傷を書き込んだ個人を特定したい!

 

一言で言うと「プロバイダ責任制限法に基づいてコンテンツプロバイダに開示請求を行い、接続プロバイダを特定したあと、接続プロバイダに対して開示請求を行う」ということになります。

 

うほっ!超分かった!!という方はいいのですが、多くの方が「??」だと思うのでまずは例で考えてみます。

 

あなたがスーパーに行って、桃を買おうとしたとします。

 

最近では「私が作りました」などと生産者の情報が書いてあることもありますが、ほとんどの場合は「山梨県産」など生産地くらいしか書いておらず、個人名を出さずに売っています。

 

この桃の生産者を知るためにはどうしたら良いでしょうか。

 

まずはスーパーの方から「運送業者」を教えてもらうことになるでしょう。

 

そしてこの「運送業者」の方に聞けばどこの「問屋さん」や「農協」が送ったかが明らかとなり、さらに「問屋さん」に聞けば最終的に「生産者である個人」が特定できる……というように、順番に聞いていけばいいわけです。

 

ネット上で個人を特定するにもこれと同じことをする必要があります。
例えば、ある掲示板に誰が書き込んだかを特定したいとします。

 

この場合は最初に掲示板(これを「コンテンツプロバイダ」といいます)の管理者に、どこのプロバイダ(これを「接続プロバイダ」といいます)経由で書き込みがあったかを訪ねます。

 

スーパーの例でいうと、「運送業者」を訪ねた段階です。

 

そして、「運送業者」、すなわち接続プロバイダが明らかとなったら、今度はその接続プロバイダに対して個人情報の開示を求めます。

 

掲示板の場合であればこれで大体個人が特定できます。

 

なお、グルメ情報や電化製品の感想を書き込めるサイトや、購入した物品のレビューを書き込めるサイトについても個人を特定するまでのイメージは大体同じです。

 

 

とはいえ、この方法でわかるのは、あくまで書き込みに利用した携帯電話やネット回線の契約者だけです。

 

普通は自分の携帯電話やパソコンを他人が使うことはないと考えられるので、契約者=書き込みをした人というように判断していますが、携帯電話を勝手に使われたような場合やコンピューターウイルスに乗っ取られた場合には、「自分が書いたんじゃないのに責任追及をされた」ということも起こるわけです(これが事件になったのがパソコンの遠隔操作事件です)。

 

携帯電話やwifi端末を他人に貸している方は特に気をつけてください。

 

 

2 全部の掲示板が情報を開示してくれるわけではない

 

プロバイダ責任制限法は国内法

 

さて、スーパーであれば運送業者を簡単に教えてくれるかもしれませんが(というか親切なお店であればすぐに生産者を教えてくれるかもしれませんが)、プロバイダというのはそう簡単に個人情報を教えてくれません。

 

というわけで、「プロバイダ責任制限法」という法律に基づいて請求を行うことになります。

 

ちなみに「責任制限法」なんて変な名前の法律だなあと感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、プロバイダが個人情報を教えても、ある一定の責任しか負いませんという法律なのでこういった名前になっています。

 

とはいえ、この法律にも弱点があります。

 

法律というのは基本的に国内向けのものなので、サーバーが海外にあったり、本社が海外にあるサービスの場合は対応できないことがあるのです。

 

ただし、元は海外の会社でも独自にガイドラインを定めていることが多いので、弁護士を通じて相談するとそれなりに対応してくれることがほとんどです。

 

 

3 相手を特定するリミットは「半年」

 

インターネットの掲示板は、「どこの接続プロバイダ経由で書き込んだか」というデータを3ヶ月から半年くらいで消去しています。

 

というわけで、被害を受けたと感じたら直ちに動かないと相手を特定できません。

 

一方、会員登録が必要な掲示板やレビュー投稿サイトでは、少し時間が経ってからでも個人を特定できることがあります。

 

プロバイダ責任制限法に基づく開示請求は多くの場合裁判所を通じて行いますが、通常の裁判をやっていては間に合わないので、基本的に「仮処分」という方法をとるのが普通です。

 

これは、20万円だとかの保証金を積む代わりに、手早く裁判所の判断をもらう手続きです。

 

余談ですが、仮処分の対応を行っている東京地裁民事9部では、申し立ての約半分がこのようなネット関係の開示事件だそうです。

 

これからこういった事件がますます増えていくのかもしれません。

 

 

4 刑事告訴は難しい

 

さて、記事をお読みの方の中には、「警察に言ったらいいじゃないか」という方もおられるかもしれません。
しかし、警察はこういった案件をなかなか受け付けてくれないのです。

 

「●●を殺す」といったストレートな犯罪予告の場合は業務妨害罪などにあたることが多く、警察の対応も早いのですが、そこまで重くない侮辱罪や名誉棄損罪の場合には被害届を出しても「犯人が特定できませんでした」とあっさり言われたという話も良く聞きます。

 

とはいえ、現在は法整備も進んでいる上、警察も捜査に力を入れています。
あとから警察に呼び出されたということになっては困るので、書き込みを行う際は十分ご注意ください。

 

 

5 書き込みを消したい

 

Googleへの記事削除依頼方法

 

先ほど述べたように、相手を特定するリミットは概ね半年です。

 

しかしとはいえ、「相手は特定できなくてもいいので、書き込みだけは消して欲しいんだ」という方もいらっしゃるでしょう。

 

そんな時は記事を掲載しているサイトに直接依頼すると消してくれることがあります。

 

 

ポイントは、「……という理由でガイドラインの○条に違反するので削除を求めます」というように、各掲示板やサイトのルールに従った削除依頼を出すことです

 

弁護士に依頼すると数万円でやってくれる方もいるようですが、もちろんご自身でもできます。

 

 

 

 

 

一方、グーグルなどの検索結果から削除を求めるのは少し厄介です。

 

というのも、検索エンジンは「自分はネット上にある情報を表示しているだけなのよぅ」というスタンスなので、検索結果の削除には否定的な態度を取ることが多いのです。

 

確かに、こういった主張は一見もっともにも思えます。
しかしよく見ると、ここに反撃のチャンスがあるのです。

 

そう! 検索エンジンが「ネット上にある情報を表示しているだけ」であれば、元の情報を消してもらえばいいのです。

 

というわけで基本に戻って元のサイトに削除依頼を出す。

 

次に元のサイトの記事が消えたら検索エンジンに「そんな情報はネット上にないです。あなたって遅れてますね。」と伝える。

 

そうすると最終的に検索結果からも消えます。

 

グーグルであれば「Google Search Console(旧ウェブマスターツール)」内の「古いコンテンツの削除」という機能があります。

 

以前これをやったら本当に消えたことがあったので、元さえ消せればうまくいくのでは?と感じた次第です。

 

 

6 記事の削除は表現の自由と衝突する問題

 

とはいえ、「削除」というのは非常にデリケートな問題です。
憲法で認められた「表現の自由」と衝突するからです。

 

何もしてないのに「犯罪者だ」と名指しされたなど、事実無根の中傷を受けた場合であれば削除を認めるのもやむを得ないでしょう。

 

しかし、例えば書籍に対する批判を削除するというのでは、少し行き過ぎの気がするのです。

 

意見を世の中に発表するということは当然批判されることもありますし、「良くない」と思ったら「最悪!」とレビューする権利があるとお考えの方も多いはずです。

 

結局、現在の落ち着きどころとしては、「レビューであっても誹謗中傷の度合いが高いものや、内容を読まずにクレームに徹しているようなもの」について要望があれば書き込んだ方の意見を聞きつつ削除を認めることがある、といったところでしょう。

 

この辺りについては賛否が分かれる部分ですので、運用を積み重ねながら時には裁判所の判断を仰ぎつつ方向性を決めていくしかないでしょう。

 

 

最後に

 

匿名記事投稿は慎重に

 

最近では掲示板だけではなく、電化製品や化粧品、マンションなど様々なレビューを投稿できるサービスが増えています。

 

したがって、気軽に意見を投稿できる反面、行き過ぎたことを書いてしまうとあなたが加害者になってしまいかねません。
もちろん、読んでもいない本に好き勝手なレビューを投稿するようなことは厳禁です。

 

書き込みをする際はどうぞ慎重に!

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